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ミラ七題  [PR]

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ミラ七題  2.独占欲

「あなたには独占欲ってものがないの?」
 宿泊していたホテルのエレベーターホールで、数週間前に一度、夜を共にした女性にそう言われた。
 たまたま鉢合わせて、彼女は男性と二人だったから見ない振りをしやったというのに、いきなり歩み寄って来てそう言うのだ。
 そういえば最近、頻繁に連絡を寄越してくる。何か勘違いされてしまったのかもしれない。
───……」
 何と言葉を返せばいいものか。
 別に、直江とて独占欲が無い訳ではない。ただ目の前の彼女には抱かないというだけだ。
 もちろん彼女は美しい。外見の美しさだけでなく、多少強引で女性らしい性格はとても魅力的だ。多分、そのことを本人も自覚している。故に偏ったプライドを捨てることが出来ないのかもしれない。
 ある種、自分と同類か。
 束縛し、される関係になりたいと、素直には言えない彼女もまた哀れなのかもしれないと思った。
「直江?」
 呼ばれて振り返ると、遅れて部屋から降りてきた高耶が所在なさ気に立っていた。
 直江とのプライベートな付き合いを匂わせる女性の出現に、どうも気後れしているようだ。
 だが、不安気な瞳の奥には隠し切れない反発が光っている。
 高耶だって彼女と同じ、哀れな人間だ。自分から、欲しいものに手を伸ばすことが出来ない。
 けれど彼は、その眼差しだけで直江を充分束縛する。
「失礼」
 そう言うと、直江はまだ何か言いたげな彼女に背を向けて歩き出した。
 唯一自分が独占し、されたいと思う場所へ。
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