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ミラ七題  [PR]

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『 3.確信犯 』≪≪     ≫≫『 5.しろ 』   
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ミラ七題  4.ベルベット

 ホテルの手続きの関係で、千秋がフロントの人間となにやらやり取りをしている間、高耶はロビーに突っ立っていた。
 手持ち無沙汰であたりを見回してみると、片隅にグランドピアノが置かれている。
 そういえば幼い頃、家にピアノがあった。
 あれは何故あったのだろう。母親が弾いているところは見たことがない。美弥が大きくなった時の為のものだったのだろうか。
 ピアノの前においてあった椅子にはビロードの布が張っていあり、あの肌触りが好きだった。
 ロビーに置かれているピアノにも、あの椅子と似たような布地が掛けられている。
 あの男が自分に似ていると言った花の、名前と色。
 高耶は眉を歪めた。
 今日は一日、千秋とふたりだが、明日になればまたあの男が合流する。
 萩での事件以来、何もかもが変わってしまったあの男が。
 今の彼があの花を前にしたら、一体何を思うのだろうか。
「景虎?」
 手続きを終えた千秋が、部屋へ行こうと呼びに来た。
「……ああ」
 弱気な考えを振り切るように、高耶は歩き出した。
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