ミラ七題 4.ベルベット
ホテルの手続きの関係で、千秋がフロントの人間となにやらやり取りをしている間、高耶はロビーに突っ立っていた。
手持ち無沙汰であたりを見回してみると、片隅にグランドピアノが置かれている。
そういえば幼い頃、家にピアノがあった。
あれは何故あったのだろう。母親が弾いているところは見たことがない。美弥が大きくなった時の為のものだったのだろうか。
ピアノの前においてあった椅子にはビロードの布が張っていあり、あの肌触りが好きだった。
ロビーに置かれているピアノにも、あの椅子と似たような布地が掛けられている。
あの男が自分に似ていると言った花の、名前と色。
高耶は眉を歪めた。
今日は一日、千秋とふたりだが、明日になればまたあの男が合流する。
萩での事件以来、何もかもが変わってしまったあの男が。
今の彼があの花を前にしたら、一体何を思うのだろうか。
「景虎?」
手続きを終えた千秋が、部屋へ行こうと呼びに来た。
「……ああ」
弱気な考えを振り切るように、高耶は歩き出した。
手持ち無沙汰であたりを見回してみると、片隅にグランドピアノが置かれている。
そういえば幼い頃、家にピアノがあった。
あれは何故あったのだろう。母親が弾いているところは見たことがない。美弥が大きくなった時の為のものだったのだろうか。
ピアノの前においてあった椅子にはビロードの布が張っていあり、あの肌触りが好きだった。
ロビーに置かれているピアノにも、あの椅子と似たような布地が掛けられている。
あの男が自分に似ていると言った花の、名前と色。
高耶は眉を歪めた。
今日は一日、千秋とふたりだが、明日になればまたあの男が合流する。
萩での事件以来、何もかもが変わってしまったあの男が。
今の彼があの花を前にしたら、一体何を思うのだろうか。
「景虎?」
手続きを終えた千秋が、部屋へ行こうと呼びに来た。
「……ああ」
弱気な考えを振り切るように、高耶は歩き出した。
PR